1998秋の旅(2)パリ~ポワチエ [1998秋フランス中部ロマネスクの旅]
10/15(木)パリ→オルレアン→サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ→ポワチエ
ポワチエ/ロイヤルポワトー・デェ・フランス 1泊
せっかくのパリの高級ホテル滞在でしたが、ホントに泊まるだけ。朝食後はあわただしく8時にバスで出発しました。4年ぶりのパリの街並みを眺めながら、バスは南下してオルレアンの街に入りました。オルレアンはジャンヌダルクゆかりの地です。サント・クロア大聖堂やマルトロア広場にも彼女の銅像が立っています。
↓大聖堂内のジャンヌ・ダルク像。崇拝の対象となった「オルレアンの乙女」です。
↓大聖堂の正面(絵葉書)
大聖堂の隣にはオルレアン美術館があり、わずかなフリーの時間を利用して入館。思いがけずベラスケスの「聖トマス」を観ることができました。
聖トマスを題材にした絵画彫刻などはほとんどがイエスの傷口を触って確かめる疑り深さまるだしのトマスなのですが、このオルレアンのは思慮深さのみられるトマスの肖像画です。帰国後、何年か経過してからですが、思いがけずこの作品についての記述に触れた評論を読むことができました。
それによると長い間ムリリョの作品として知られていたとか・・・。(ロベルト・ロンギ「芸術論叢」)ロンギの論文「カラヴァッジョとベラスケス、あるいはイタリアス-ペインの関係」(1927)でこの聖トマスを取り上げています。
↓大聖堂の前はオテル・グロロ(市庁舎)ですが内部の見学は無し。
あいにく時々小雨の降る天候でしたが、ジャンヌ・ダルクの面影の残る街を散策。
↓オテル・グロロの裏通り
↓マルトロア広場。木組みの家がジャンヌ・ダルクの記念館になっています。
このとき広場で大勢の高校生がデモをしていました。後程知ったのですが、このリセのデモはフランス全土に広がって、50万人が参加したという大規模なものでした。教育現場の改善を要求してのデモとのことでしたが、受験戦争の激しい日本より恵まれているのに・・・日本の高校生が大人し過ぎなのかも。
ランチはオルレアンの街はずれのレストランLa Vieille Aubergeにて。メニューはカニ風味の前菜、仔牛のロースト、サラダ、アイスクリーム。隣席にバスのドライバーさんが座ったので、ほんの片言のフランス語でお話し。アルジェリアから移住された40代くらいの男性で、生粋のフランス人でないので、ひどいフランス語でも気楽でした。そのうえ上手だとか言って褒めてもらったり・・・ふふふ。シニアの多いツアーなので、あまり歩かないようにバスをギリギリまで、しかも道に迷わずに駐車してくれたり、とにかく真面目で優秀な運転手さんでした。
オルレアンからサン・サヴァン・シュル・ガルタンプまで、200K以上は走りようやく到着。
↓ガルタンプ川にかかる石橋
↓川向こうに見えたサン・サヴァン教会
ツアーのバスはガルタンプ川の手前で止まり、橋を渡って村に入りました。右にはサン・サヴァン教会の研究でここの壁画を世界に知らしめた吉川逸治先生の逗留されたホテル(現在は廃業)が見えました。
左の小道を行くと教会の前の広場はすぐ近く。すれ違う村の人たちはニコニコ笑顔で迎えてくれました。
☆サン・サヴァン教会Eglise Abbatiale St-Savin
カロリング朝の9世紀からという古い歴史があるももの、その後ノルマンの破壊を受けたこともあり、17世紀まで改築を重ねられて様式は複雑になっています。
教会の建物は黄みがかった灰色の石造り、高い尖塔も重厚な雰囲気です。私にとっては初めて訪れたロマネスク教会でした。予想していたシンプルで楚々とした教会ではなく威厳のある感じでちょっぴりがっかりでしたが、ここはなんといっても壁画で有名なので、期待に胸膨らませ内部へ。
雨は止みましたがどんよりとした曇りの天気で、堂内も薄暗く、高い天井の壁画はますます見え難い状態、双眼鏡やオペラグラスも持っていなかったので途中でギブアップ。また、全部を鑑賞する充分な時間もないのはスケジュールに追われるツアーの宿命。仕方ありません。
↓9つの梁間を持つ長い身廊(絵葉書)
↓旧約聖書の主題からの半円ヴォールトの天井に描かれた壁画
↓上の写真では中央部分の「ノアの方舟」(絵葉書)のドラマティックな描写に目を奪われました。ロマネスクの彫刻や壁画では「新約」より「旧約」の場面が多いように思います。旧約に疎い私にはこの時は解説なしには半分も読み取ることはできませんでした。
↓同じく身廊天井の「エノクの昇天」(絵葉書)
↓トリビューン(上階廊)に描かれた「十字架降下」(絵葉書)
クリプトやトリビューンも見学不可ですし、特に「ヨハネの黙示録」をテーマの玄関廊は難解さもあり、ほとんど観てないのも同然でした。↓は再訪を期して古本屋さんから購入した吉川先生の著書です。
私のようなロマネスク初心者にはサン・サヴァン教会は勿体なかったなというのが本音でした。バスはポワティエへの途中、ショーヴィニーを眺望するビューポイントで写真ストップ。時間がなかったらしく、ショーヴィニーのサン・ピエール教会には寄りませんでした。ここもポワトゥ・ロマネスク巡りには欠かせない重要な教会ですから、友人のKさんも納得できない様子でしたが、仕方ありません。
↓ショーヴィニー遠望
秋の日は暮れるのも早く、夕方6時頃ポワティエ郊外のホテルに入りました。夕食はホテル内のレストランで。鶏レバーのゼリー寄せ、白身魚に野菜、チーズ、ミルクライスプディングでした。
↓ホテルの部屋
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