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1994春の旅(6)ロンドン~アムステルダム [1994春ヨーロッパ初めての一人旅]

5/12(木)

ロンドン(LHR)11:30→アムステルダム(AMS)13:35 (BA)

 1時間時差があるので飛行時間は1時間5分です。飛行機は海峡を渡って、スキポール空港までは回り込むように低空飛行して、この時期の美しい農村風景を見せてくれました。チューリップ畑が色とりどりの絨毯のようにひろがり、煉瓦造りの農家や小さな教会などが点在して、ネーデルランドの風景画のようでした。5月も中旬でしたから、この年はチューリップはやや遅咲きだったようです。あちこちでまだ盛んに咲いていました。

 ホテルは前年泊まったホテルの近くで、シンゲル運河とライツェ広場の角に建つアメリカン・ホテルです。アールデコの建物が美しく目立っていましたので、次回来るときに泊まりたいと思っていた憧れのホテル、2泊しました。

↓ホテルのロビー

オランダ5.jpeg

↓部屋からは運河は見えませんでしたが、窓の上部にステンドグラスのクラッシックなインテリア。

アムステルダム4.jpeg

アムステルダム6.jpeg

 小休憩の後は早速外出。3月に来た昨年とは違う街のような華やかで、暑いくらいの陽気のアムステルダムでした。

↓カジノ近くのカフェも満席です。橋の向こうに見えるのが宿泊したアメリカンホテルです。

アムステルダム.jpeg

↓反対側には国立博物館が向こうに見えます。

オランダ2.jpeg

☆アムステルダム国立博物館(2)

 昨年見逃していたクリヴェッリの「マグダラのマリア」をぜひ見たいと再訪したのですが、その展示されてる部屋が見当たりません。案内のガイドさんは「イタリアンペインターの部屋」にあるというのですが、館内マップには載っていない?のか何処と聞いても説明できないから、このあたり(指で示す)で係員に訊いてというだけ・・・。掴まえた係員はそんな部屋はないという始末。全然見せる気もないようで(怒)でもあきらめずにきょろきょろ、するとある部屋の閉じたドアから人が出てきて、ちらっと室内に絵画が並んでいるのが見えました。ドアには何の表示もありませんが、ここがイタリアやスペインの画家の展示室だったのです。

↓Carlo Crivelliカルロ・クリヴェッリ「マグダラのマリア」(1477頃)152×49

Crivelli%20AMS.jpg

クリヴェッリの作品の中では最も有名な絵画ではないかと思います。澁澤龍彦氏がエッセイでこの作品に触れています。「・・・大胆な線で描いた髪の毛は、ボッティチェルリの貝殻から生まれたウェヌスの髪に似て、束になって大きくうねり、両肩から前と後ろに分かれ、腰のあたりにまで及んでいる。この重々しい輝くばかりな金髪の壮麗さときたらどうだろう!カルロ・クリヴェッリ特有の、冷たい金属的な感触をあたえる黄金の色調が、ここで見事な絢爛たる効果を発揮している・・・」(『幻想の肖像』より)

この作品を紹介された名文として私の脳裏に刻み込まれたばかりにこの絵画を求めて、この1994年以後も何度かアムステルダムに行くたびに通いました。しかし、数回の訪問のうちこの作品に出会えたのはこの時だけ。

前年情報を得ていた展示室からはすでに移され、何の表示もない殺風景な小部屋にゴヤやティントレットなどと並んでいました。見取り図にもないこの部屋を探すのが本当に苦労でしたがこの細長い構図に納まった豪華版マッダレーナは、そんな熱い私を怜悧な瞳で出迎えてくれました。
気取った不自然な手の描写もそんなマッダレーナの表情に似合っています。クリヴェッリの描いたマグダラのマリアは他の祭壇画にも見られますが、このマッダレーナは宗教的精神からはずれそうな、かといって官能的でもない、独特の雰囲気。中期の代表作。署名あり。   

最近は美術館の大規模な改装工事のため、未公開のようです。工事中は貸し出しされるのが普通ですが、それもなく、ひっそりと匿われている気配・・・。出所は不明。細長い形から祭壇画の一部とも考えられますが、それも該当するものがなく、台座の銘文から独立した絵画と見る説もあり、ミステリアス。(マイHPより転載)

↓クリヴェッリと同じ部屋にあったTintorettoティントレットの「受胎告知」

ティントレット1.jpeg 

 他のネーデルランド画家たち

↓Jan van Scorelスコーレルの「マグダラのマリア」(1530頃)67×76

スコーレル.jpeg 

 ↓jacob van Ruisdaelライスダールの「ドゥールステーデに近いウェイクの風車」(1660代)

ライスダル1.jpeg

 ここのお宝のレンブラント、フェルメール、ハルツの名画の数々に加えて、テル・ボルフ、デ・ホーホ、ライスダールやヴァン・デル・ネールの風景画、カルフの静物画なども鑑賞しました。

↓フェルメール「牛乳を注ぐ女」(1658-60頃)45×41&「デルフトの小道』(1660頃)54×44

フェルメール3.jpeg  フェルメール.jpeg

↓ ブックショップ

アムステルダム5.jpeg 

 夕食はホテルに併設のカフェ・アメリカンで。アール・デコの内装も素敵です。スープ、メインはお魚、コーヒー○


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1994春の旅(5)ロンドン [1994春ヨーロッパ初めての一人旅]

5/11(水)

 この日の午前中はマダム・タッソー蝋人形館へ。入口は観光客で行列、30分並んで入館できました。さすがにロンドンでも大人気の観光名所です。

↓まだダイアナさんが皇太子妃だった頃です。

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↓こちらはご存じヘンリー8世と妃たち

イギリス13.jpeg

↓ 北の富士の蝋人形の前で。

イギリス11.jpeg

 ランチはロンドンそごうで生寿司とビール。久しぶりの日本食は○でした。午後からは昨日に続いてナショナルギャラリーへ。

☆ロンドン・ナショナルギャラリー(4)

 イタリア15世紀から回りました。まずは今回の鑑賞で一番のお気に入りになったPiero della Francescaピエロ・デッラ・フランチェスカから。この時点では後年ピエロの名画を訪ねる旅に出るとは想像もできなかったのですが・・・この絵がその原点になったことは確かです。旅のブログに転載後は削除する予定ですが、HPに「ピエロ・デッラ・フランチェスカを訪ねて」を作成済みです。

↓ピエロ・デッラ・フランチェスカ「キリストの洗礼」(1448-50)167×116 この絵画は目立たない展示室にありました。昨年はあったのかどうかさえ気がつかなかったのに、どうしたことかこの絵の前でピタっと足が釘ずけに・・・。キリストの表情、背景のグレイとブラウンを基調とした色合い、左にいる天使たちの仕草も好ましいと思いました。眼が洗われるような静謐で爽やかな画面。画集では観ていたはずなのに、実物は全然違う…とつぶやく私。新しい発見でした。

Piero1.jpeg

 他にピエロの作品は「キリストの降誕」「大天使ミカエル」があったはずなのですが、あまり記憶に残っていません。(2007年に再訪)

そして、イタリアバロックに飛びますが、忘れてはいけないのがCaravaggioカラヴァッジョ。後年イタリアの旅で意識的にカラヴァッジョを巡るコースをとったこともあり、マルタ島やシチリアにも足を延ばし、結局、全作品の90%くらいは観ることができました。ここナショナルギャラリーのコレクションでは

↓「エマオの晩餐」(1596-98頃)141×196。聖書の題材をまるで迫真的な演技を伴ったドラマのように描かれています。明暗、構成、キリストや弟子たちの表情など完成度の高さではぴかいち。

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↓「トカゲにかまれた少年」1593頃 66×49  同じ主題のヴァージョンがフィレンツェにもあり、真偽論争がありましたが、現在はいずれも真筆と考えられています。

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 そして北方ルネッサンスの展示室ではヤン・ファン・エイクに続く画家たちの作品をいくつか

↓Robert Campinカンパン「暖炉衝立の前の聖母子(授乳の聖母)」(1425-28)63×49 画像はNETから

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↓上と同じカンパンの作品とは思えないほど、ナチュラルでかつ写実的な市民の肖像画。「男の肖像、女の肖像」(1430頃)各41×28  対画となる夫婦像でしょうか。

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↓Rogier der Weydenウェイデン「読書するマグダラのマリア」(1440頃)61×55 祭壇画の断片ですが、今まで見てきたマグダラのマリアを描いた絵画とは異なる思慮深く清潔感あふれる横顔の美しさ。

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↓ ルーベンスの作品も多数ですが、極上の1点は「サムソンとデリラ」185×205

ルーベンス1.jpeg

 この後巡るオランダやベルギーで観ることのできる北方絵画への期待が高まってきました。レンブラント、ハルス、フェルメール、エイク、カンパン、ウェイデン、メムリンクetc・・・。夕食はホテル近くのイタリアレストランでシーフード・サラダ、トマト味のリゾット、ティー。味は△でしたが、イタリアワインだけは○。ロンドン最後の夜、明日は移動です。荷造りをして就寝。


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